大規模動物病院の予約自動化とオペレーション可視化で院内DX推進を実現

埼玉県所沢市にある日本小動物医療センターは『動物のクオリティー・オブ・ライフ(QOL)を第一に考え、ご家族に寄り添った最善の獣医療を提供します』という理念の元に診療を行っている動物病院で、二次診療施設(ホームドクターからの紹介状が必要な専門医療)と夜間の救急病院として2004年に開設されました。
犬猫のがん治療の病院としての知名度が高い病院ですが、12の診療科を抱える総合病院として、『研究、診療、人材育成という3本の柱を基本方針』として日々の診療に邁進しています。また、蓄積されたデータを生かし、国内はもとより海外においても論文・学会発表などでも情報を発信し続けています。
日本小動物医療センターで獣医師として働く傍ら、DX推進業務にも携わっている井上先生に、Animary byGMO(以下、Animary)についてお話を伺いました。

  • 診察の進捗状況を病院全体で共有できず、スタッフ間の連携不足により不要な待ち時間が発生してしまう
  • 外来件数を調整していないサポート診療科(画像診断科・麻酔科)の混雑状況をリアルタイムで把握できない
  • ステータス管理によりご家族の待ち時間が可視化されたことで、ご家族に対するスタッフの意識が変わった
  • どの業務がボトルネックになっているといった課題が見つかり、診療スタイルの改革のきっかけになった
  • 連鎖予約の導入により、メモ用紙やホワイトボードなどのアナログツールを廃止することができた

悩みだった内線電話や紙媒体によるスタッフ間の伝達漏れ

日本小動物医療センター井上先生

—— Animaryをどこでお知りになりましたか?

インターネット検索で知りました。
数社のウェブサイトを見て、その中でAnimaryは機能が充実している印象でしたね。
そこが最初にご相談したきっかけです。

—— システム導入時に抱えていた課題はどのようなことだったでしょうか?

診療の進捗状況を共有するためのデジタルツールがないというのが大きな課題でした。スタッフ間で内線電話や紙媒体でのやりとりが頻繁に行われているのですが、この方法ではどうしても伝達漏れが起こってしまうというのが悩みでしたね。
また、動物診療では患者の診察の進捗だけではなく、ご家族の待機場所やお迎えの時間等を把握することも大事なのですが、この点についての情報共有も不十分でした。

このような「診療の進捗とご家族の動きの両方を正確に把握しなくてはならない」という現場スタッフの課題感が、予約システム・DXツールを導入しようと動き始めたきっかけです。
獣医師代表として私がシステム選定を行うことになったのですが、何かいいツールはないかと調べていく中でAnimaryを知りました。「Animaryを使うことで我々の課題が一気に解消されるのではないか」とスタッフ間で話し合い、これが院内のDX推進の始まりとなりました。

システム導入によって待ち時間が可視化されたことで病院全体の意識が変わりました

—— システムを導入する前は、どのような運用をされていましたか?

システムの導入前は受付にボードを設置して、そこに来院されたご家族の名前を記入してもらっていました。そのため、何時に来院されたかなどは受付スタッフを介さないと把握できない状況でしたので、獣医師としては診察までの待ち時間を意識するというのは非常に難しかったです。
また、受付には診療の進行状況は伝わらないため、ご家族が待合室で待機している理由が、診察なのか、調剤なのか、会計なのかを把握することも困難でした。
このような状況の中で実施したご家族アンケートで「待ち時間への不満」が大変多く寄せられましたので、早急に状況を把握し、業務スタイルを見直さなければという思いでした。

—— そのような課題を解決するためにAnimaryを活用することになったんですね

そうですね。Animaryを導入して、院内の動きがステータス管理されるようになると、例えば「調剤でご家族を長時間お待たせしている」というようなことがはっきり見えるようになりました。
待ち時間が具体的に示されると、スタッフの意識も変わっていき、混雑時には直接お声がけをしたり、「ただいま調剤待ち時間●分」という掲示を行うようになりました。

Animaryのステータス管理は、ステータスごとに打刻できるだけではなく、病院の運用に合わせて設定変更ができ、通知もできますから単純なステータス管理以上の高度な管理が可能です。電子カルテ導入前には「入院中」というステータスを利用し、全診療科の入院症例の管理に活用していました。以前は手書きで管理していたので、大変便利になりました。

手術中の写真

—— システム導入後の院内コミュニケーションについては、どのような変化がありましたか?

Animaryの予約情報を活用することで、スピーディーな情報伝達が可能となり、劇的に業務効率が上がりました。他の診療科の獣医師の動きだけでなく、処置室、手術室の利用状況もリアルタイムで把握できるようになりました。

—— ご家族の待ち時間も減っていますか?

ステータスを全スタッフが確認することができるようになり受付以外のスタッフが長時間の待ち時間に気づく機会が増えましたし、特にスタッフ間の連携不足による待ち時間が減ったと感じています。

「どの業務がボトルネックになっているか」が可視化されたことで業務見直しのきっかけに

—— 院内業務の可視化によって、他にはどのような変化がありましたか?

Animaryの導入によって、「どの業務がボトルネックになって待ち時間が発生しているか」が可視化され、院内のあらゆる業務を見直しするきっかけになりました。

——ボトルネックとなっていた業務とは、具体的にはどのような業務でしたでしょうか?

特に課題感が大きかったのは、麻酔科とCT室の予約管理です。
麻酔科は他の診療科から依頼を受ける「サポート診療科」というポジションです。
当時は外来診療科からどんな依頼が来るのか、当日にならないと分からなかったため、麻酔科の人的リソースがひっ迫することがありました。

また、検査をするときは動物に麻酔をかけなければいけないのですが、CT室の混雑状況がわからなかったため、外来診療科からCT検査の依頼が次々に入り、夕方をすぎても検査が終わらないということもありました。

Animaryが色々な課題を浮き彫りにして解決してくれたと感謝しています

猫

——そのような状況の中で、Animaryの「連鎖予約」というオプション機能を知っていただけたんですよね

そうですね。外来診療科が事前に「この症例はCT検査あり」というような定義をしておくことで、外来診療予約の際にCT室や麻酔科担当医の連鎖予約ができるようにしました。
導入前は、ホワイトボードにマグネットを貼り付けて、パズルをはめ込むように麻酔科担当医の予約を管理していたのですが、Animaryによってホワイトボードでの管理は不要になりました。
連鎖予約というオプションがあったから実現できたことです。

また、連鎖予約の効果は予約管理だけではなく、獣医師の診療スタイルの変化ももたらしました。
麻酔科医一人一人の予約枠を設定することでスケジュール管理が可能になり、「今日は何件麻酔の予約が入っているから、これ以上は難しいですよ」と業務負荷を周囲と共有できるようになりました。
一方で外来診療科では、「今日はこれ以上麻酔の追加オーダーをするのは難しいな」と分かるようになり、ご家族と相談し翌日以降に実施するなどの調整もできるようになりました。

麻酔科の予約管理が実現できたことで、診療の混雑のピークも把握できるようになりました。 予約システムでコントロールすることによりオフピークを有効活用し、システムだけでは対応しきれなかったものは、我々の診療スタイルを変えるという大きな改革を行うに至りました。

今までは初診のタイミングですべての検査を完了する方針でしたが、検査終了し麻酔から覚めたときには夜遅くというケースもあります。ご家族を長時間お待たせしてしまうため、初診の時は麻酔が必要な検査はせず、後日予約をとって麻酔の必要な検査を行い、夕方までには終えるという方針に変更しました。
この方針変更は、Animaryの導入により可視化された課題に対する解決策の一つです。

この状況に至るまでは、試行錯誤を繰り返す大変な改革でしたが、本当にやってよかった、Animaryが色々な課題を浮き彫りにして解決してくれた、と感謝しています。

Animaryは、なくてはならない「診療の主軸」

スタッフの皆様

——かなり大きな院内改革だったと思いますが、スタッフの皆様の反応はいかがでしたか?

スタッフはみんな、Animaryがないと仕事にならない「なくてはならないツール」「診療の主軸になっている」と思っているようです。
今までは紙の予約票を壁に貼り、そこにみんなで書き込んでいましたが、今は全部撤去しています。

慣れているやり方を大きく変えるということには多少の抵抗感もあり、100名以上の現場スタッフに説明して納得してもらうのは苦労しました。
思い切った改革でしたが、少しずつ緩やかに変えていきました。

——ありがとうございます。大規模病院であるにも関わらず、想定よりもかなりスムーズに導入していただいたと感じますが、操作面はいかがでしたか?

操作に関しては、新人スタッフが困っている様子もなく最初から無理なく操作できている印象です。
私自身も、直感的に操作ができて非常に使いやすいと感じています。
機能が多く最初から全てを把握していませんでしたが、どんどん使いこなせるようになってきていて、私が知らない機能を使っているスタッフもいますね。

——院内DX推進をこれだけスムーズに実行できたのは、獣医師の立場、経験をもとに効率よく改善を進められた井上先生の力量が大きかったのではないでしょうか。井上先生が獣医師になられたきっかけはどのようなことでしょうか?

小さいころからずっと動物を飼っていて、動物が好きだったというのが大きいですね。
私自身が飼い主の立場でもあるので、どういう獣医師だとご家族に信頼されるかという視点は忘れないようにしようと思っています。

動物病院に勤務する中で自分の技術や診療に限界を感じ、もっと勉強したいと思いこのセンターに来て、もう13年目になります。
当センターのスタートは小さな規模の病院でしたが、ありがたいことにホームドクターの先生方からのご紹介が増えつづけ、現在は在籍する獣医師だけでも60名以上もいて、大規模な動物病院になっています。内部にいる私から見ても、当センターには非常に優秀で信頼できる獣医師がたくさんいる病院だと感じているので、全員が効率よく診療を行い、今まで以上に良質な医療を提供できるよう、私も院内DX推進を頑張りたいと思っています。

——Animaryのサポート体制についてはいかがですか?

サポートについてはリアクションが速くて大変助かっています。
操作面でわからないことがあれば、スタッフ各自で直接サポートに質問して解決できています。
導入して最初の1~2か月ぐらいは、比較的多くやり取りさせていただきましたが、現在はサポートの方に手伝っていただく機会は非常に減ったと思います。

——今後の展望をお聞かせください

日本小動物医療センター(外観)

当センターは2004年に開業して、2018年に現在のセンターに移転し、三階建ての大きな病院になりました。2024年4月から新たに免疫治療を中心とした第3腫瘍科がスタートし、8月には研究部門であるトランスリレーショナルリサーチセンターを加えた新たな病棟もできました。
これにより、一層がんの診断と治療に特化した診療体制も提供できるようになり、地域の皆様からも「がん治療で有名な動物病院」と認知されています。動物の高齢化によって、がんで悩む症例が増えている状況です。

私個人の展望としては、診療だけではなく一緒に働く獣医師が快適に診療を行えるようなサポートにもますます力を入れていきたいと考えています。そして、一人でも多くのご家族の方に、当センターを「あそこは困ったことがあった時には頼れる病院だ」と思っていただけるよう、全力を尽くしたいですね。

井上先生、本日はご多用のところ、貴重なお話をありがとうございました!

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